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1首鑑賞70/365

蛇一匹蟻に食はれてゐたりけり山は雨ふるまへの寂しさ
   間瀬敬『エルベの石』

     *

一匹の蛇に対して無数の蟻が群がっている。しぜんな光景ではあるが、そうしょっちゅう見るものでない。一瞬ぎょっとする。蛇と蟻ではずいぶんサイズがちがう。その蛇を、蟻が食べている。じりじりと眼に焼き付いたのか、「ゐたりけり」と思い直されている。

そこからうたは、全景へと、そしてわたしの心情のほうへとうつっていく。山道を来たのか、麓にいて山を見上げているのか、あるいは谷間の集落にいるのかもしれない。ともかく山ということを感じている。そして今にも雨が降りそう。静かに、不気味な時間である。小さな眼前の光景と、それを含み、かつ、わたしを巻き込みながら存在する大きな山の空間が、対照的に浮かび上がってくる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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