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1首鑑賞65/365

おびただしき桜の落ち葉ちり敷けるひとつひとつがその母樹を恋ふ
   中島行矢『母樹』

     *

二句切れで読んだ。おびただしき桜の落ち葉を見ている。

桜は秋ごろから実に長い時間をかけて葉を落としていき、遅いのは年を越してもなお残っていたりする。早いのもあれば遅いのもあるそのなかで、大方はある時期どさっと散るのだろうか、桜の木の下にはなにかを埋めるごとく葉の散りだまりができている。そのひとつひとつの葉に、この人の眼差しが向く。

母樹、ということばをこの歌集を手にとってはじめて知った。落ち葉のひとつひとつが母樹を恋う、という、これはこの人の見立てに過ぎないが、こうやってきっぱりと言われてみると、ある説得力をもつ。説得というより、おのれに言い聞かすような感じなのだろう。母樹を恋う無数の眼差しは、ほかならぬこの人の眼差しである。落ち葉の無数のこころを介して、桜の木、あるいは母なるものをおもう1首なのだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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