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1首鑑賞61/365

夏草のやがて覆へる道ならむ近き記憶のかへることなし
   内藤明『薄明の窓』

     *

下の句の「近き記憶のかへることなし」にはっとする。ひとつ前の髪型が思い出せないような、いまはコンビニが建っているこの角に、前は何があったっけ、と、そんな感じだろうか。直前の記憶というのは、ついこの間のことであっても、案外すっぽりぬけおちてしまう。

よく見知った道ならば、また去年や一昨年のように、夏草に覆われてしまうのだろうと、今はまだ、路面あらわなところを見ているわけだ。見知らぬ道であるならば、丈高くなりつつある青草を見て、ああ、このままではあっという間に覆い尽くされてしまうだろうなあ、と想像している場面である。いずれにしても、いまのこの光景が、いずれは「近き記憶」となるはずだ。しかし夏草にすっかり覆われてしまえば、もう、この光景は思い返しがたいものになってしまう。髪型やコンビニでないところが、このうたの味わいだろうとおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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