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1首鑑賞55/365

春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外(と)の面(も)の草に日の入る夕
   北原白秋『桐の花』

     *

北原白秋のうたは、たとえば茂吉や牧水ほどには読んだことがない。というか、ほとんど読んだことがない。それで、第1歌集『桐の花』をひらくと、まずこの1首があっておどろく。これが巻頭歌なのか……。春の鳥に、鳴くな鳴くなと呼びかけている。外は夕暮れ、あかあかと草地に日が差している。こまかく文節がきれてこぎみよく、あかるいうたではないけれど、湿っているふうでもない。

「春の鳥」で「春の」が「鳥」にかかることや、「外の面の草」という視線の食い込み方など、言うべきことは多いが、どこか痛々しいこのうたのイメージは、白秋の童謡にみられるある一面とかさなって映る。そういうことを、今読むとまずおもう。

ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日

こういうよく知られた、教科書で出会ったことがありそうなうたが、ぽんぽん出てくる。どれも色彩あざやかに迫ってきて、なにか、はじめてではないような気がしてくる。

寝てきけば春夜(しゆんや)のむせび泣くごとしスレート屋根に月の光れる
白き犬水に飛び入るうつくしさ鳥鳴く鳥鳴く春の川瀬(かはせ)
ウイスキーの強くかなしき口あたりそれにも優(ま)して春の暮れゆく

1首目の比喩の鮮烈、2首目の光景のまばゆさ、3首目の恍惚。これが白秋なのか……。いや、なんか、おどろいている。

病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑(ばた)の黄なる月の出
水面(みのも)ゆく櫂のしづくよ雪あかり漕げば河風身に染みわたる
草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝(ね)て削るなり

ちょっときりがないので、ここまで。冒頭の1首はやはり赤。つづいて紫、黄、白、琥珀(でも、ウイスキーはあくまで口あたり。春の色を思い浮かべたい。何色だろう)、黄、白、赤。そういえば以前、I氏に「白秋は色ですよ」と教わったような気がする。なるほど、たしかに色だなあ、とおもう。場面喚起力がつよい。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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