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1首鑑賞44/365

はつ夏のポストに二通さし入れて引きかへしたりつばめ舞ふ路地
   染野太朗「引きかへす」『太朗九州』①

     *

なにかのついでにひょい、と出す感じではない。二通出そうとおもってポストまで行って、それで用は済んでしまってそのまま引きかえす。このうたは、(タイトルに引っ張られた読みのようだけど)「引きかへす」という動作そのものをうたっている。「はつ夏」を意識しながらポストへ向かう。引きかえすとそこに「つばめ舞ふ路地」がある。ポスト以前と、ポスト以後がある。用を済ませにいく道と、用を済ませたあとの道がある。これから行く道と、さっき通った道がある。ふたつの景色が、ポストを境に綴じあっている。

もう少しよく読むと、ポスト以前の道程は描かれていない。いきなりポストから始まる。けれども「引きかへす」が、その景色を呼び起こす。このアシンメトリーが、読者をちょっと不安にさせる。なにか、ポスト以前と以後に、大きな断絶があるんじゃないか、とおもわれてくる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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