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1首鑑賞40/365

つきの光に花梨(くわりん)が青く垂れてゐる。ずるいなあ先に時が満ちてて
   岡井隆『ネフスキイ』

     *

このうたと初めて出会ったのは黒瀬珂瀾さんが選歌をした『岡井隆歌集』(現代詩文庫502)だったか。表紙に大きく1首が掲げられている。それ以前にどこかで出会っていたかもしれないが、今ではこの表紙の1首がまず浮かぶ。これも曖昧な記憶だが、荒神橋歌会[要出典]で元になるうたが詠草にあって、そのときの様子や推敲の過程を大辻隆弘さん[要出典]がどこかに書いていらしたような。なんとなく、伝説の1首という感じがある。

このうたを、家に帰る夜道でふと口ずさむ。声に出してみて心地よい。疲れているとき、寂しいとき、やってらんないなあというとき、つぶやいてみて、陶酔の気分にひたることができる。挿入された「ずるいなあ」に、こちらの感情を載せることができるのだ。つきの/ひかりに/くわりんが/あをく/たれて/ゐる、とこまかに文節が切れていって、句点の溜め、そこからの「ずるいなあ」であるから、自ずと放出の感じがある。「時が満ちる」という詩句は聖書のことばだったか。花梨の像がふたたび、生々しく浮かび上がってくる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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