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1首鑑賞38/365

タクシーより酔いたる夫を降ろそうとすればヤメテクレーと鳴きたり
   鯨井可菜子「グラム・パー・デシリットル」『ねむらない樹』vol.2

     *

昨年「クリームパンと担々麺」という二人五十首で描かれていた「夫」と同じようなタッチで描かれるこのうたを、続編のように読んでおかしかった。戯画化された感じは「ヤメテクレー」よりも「鳴きたり」にはっきりと表れていて、ここまで言われることで、読者のわたしは安心してずっこけることができる。

ヤメテクレー、とはしかしまるで引きずり降ろされるかのような抵抗だなあ、とおもう。実際には、ほら降りるよ、と声をかけながらやさしく降ろされたのかもしれない。いやいや。はいはい降りるよ、ときつく言われたかもしれない。いい加減にしなさい。あるいは酔っておどけてヤメテクレー、という声になっただけか。ヤメテクレーじゃないって。いずれにしてもこうやってうたになってみれば、何やらたのしげに見える。

ヤメテクレー、というのはいささか大げさにも見える。けれども、この質感の出し方は、夫婦のうたとして、そんなにないんじゃないかなあ、とぼんやりおもう。ある種のこだわりというか、「鳴きたり」まで言って言いきるあたりに、1首の存在感がある。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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