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1首鑑賞26/365

夏休みの初日の朝のうすぐもり短い髪の兄のくびすじ
   東直子『十階』

     *

いかにも夏、夏休み(快晴! 海! 日焼け! プール!)という感じではない夏休みの始まりである。朝起きてみたけれど、学校はないし、だからといって何かやることがあるわけでもない。ああ、始まったなあ、という感じ。セミが鳴いていてもよさそうだが、その音も(なぜか)聞こえない。静かな1首である。

いかにも夏、夏休み、という感じではないのだが、だからこそ余計に、いかにも夏休みの「初日」という感じがする。夏休みの「前」でも「半ば」でも「始まって1週間後」でもない、「初日」の感じ。始まるまではたのしみにしていたとして、始まってしまえばその(待つ時間の)たのしみはなくなってしまう。逆に、夏休みいやだなあ、とおもっていたとして、そのいやな気持ちを、初日の朝からいきなりつきつけられることも、そうそうないとおもう。そういう初日の気分だ。

視線は兄のくびすじに向く。髪を短くしているので、首筋がきれいに見える。ちょっと距離がある。もつれあい、からまりあいしてきた兄との時間が浮かんでくる。ひとつ先の、向こうの世界に兄が行ってしまうのを、おそれるような、さみしくおもうような、そういう眼差しだ。夏が始まる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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