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1首鑑賞16/365

元カノの話はやめろ鬼になるぞ送りつけるぞ自撮りの鬼だ
   黒川鮪「川面もいのち」『福岡女学院大学短歌会』vol.1

     *

LINEかなにかのやりとりだろう(メールやMessengerなど、文と写真を手軽にやり取りできるものであれば、何を想定してもいいとおもう)。何かの流れで、「元カノの話」が君からぽっと出てきた。今わたしは君と離れて、君は東京に暮らしている、という一連のなかで、その君とのやりとりの場面である。このうたの内容をじかに君に送ってもいいような関係性におもえるが、実際に言ったか言わなかったか。ともかく、こういう気持ちであったわけだ。このいかにも突発的な感情の表れ方が、現場的であり、畳み掛けるうたの作りがそれをよくあらわしている。

この感情、というのはいちばん雑な言い方をすれば怒りなのだが、もちろん怒りそのものとはまるでちがう。怒っているときは、すでに鬼になっていて、しかも自分が鬼になっていることに気づいていない。けれどもここでは「鬼になるぞ」と挑発している。鬼ではないのだ。下の句では、この鬼のデティールが少しずつ明かされる。送りつけるぞ、とある。「鬼」ということばには形容詞的用法があるが(鬼のようにこわい=とてもこわい、のような比喩的表現から派生したのか、鬼(のように)寒い=とても寒い、というように使われることがある)、鬼のように(鬼となって)送りつけるぞ、ということだろう。たくさん送る(送りまくる)、でもいいし、なにか怨念をこめて(圧縮して)送る、でもいい。それをひとこと「自撮りの鬼」と言い切る。自撮りの鬼、と単体で使うときには自撮りをたくさんする人、くらいのニュアンスとおもうが、ここでは「送る」というほうにも比重がある。送るのは、自分で撮った自分の写真である。元カノへ、あるいは元カノの話題を出す君へ対抗するかのようであり、けれども、どこかに戯れの雰囲気があって、楽しげだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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