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1首鑑賞10/365

ぴんぴんのピンク映画はもう見れぬ映画館ごと更地となつて
   池田毅『うたつかい』第27号

     *

テーマ詠「オノマトペ」の1首である。ぴんぴん、というのがオノマトペにあたる。もちろんピンク映画にかかるわけだが、単にピンク映画の「ピン」を導いているだけではなさそうである。なんだろうなあ、ピンク映画を見るときの心持ち、感情の感じが現れているようにもおもう。

ピンク映画を見ていたのはいつの頃か。今でもピンク映画というのはあるのかな、存在は知っている、くらいの認識でいたけれど、どうなのだろう。「ピンク映画」の「ピンク」というあたりにある時代の気分が巻きついていて、おのずと歳月の隔たりを感じさせる。ぴんぴん、という溌剌とした語感と、「ピンク」がまとうある種の古くささが、かつてピンク映画を見ていたであろうこの人が、いま決してそう若くはないであろうことを思わせる。そういう点から、「もう見れぬ」というのは、年齢的、社会的に、というふうにまず納得された。けれどもうたは、そうは展開しない。

かつてピンク映画を見ていた、その映画館がついになくなってしまったのだ。わたしがかつて住んでいたところは人口4万人ほどの小さな市だったけれど、アーケードというものがあって、そこに2つ3つ映画館があった。むろん、今ではどれもやっていない。建物こそあるが、ほとんど廃墟と化しているとおもわれる。映画館の現状だろうとおもう。映画館ごと更地となつて、というのはそのとおりなのだ。けれどもここには事実以上の喪失感がただよう。ぴんぴんの、という初句にかえってみて、いよいよ悲しくなってきた。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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