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1首鑑賞4/365

鳩をおいかける子どもを目で追ってまばたくたびに桜が開く
   拝田啓佑『塔』2018.7月号

     *

追いかける、という複合動詞をひもとくように初二句の句またがりがある。鳩を追う、という体の向き方と、追って駆ける、という体の動かし方がそれぞれに強調されるようで、その、子どもの動きとそれを含むたとえば駅前の、あるいは小公園の風景が浮かんでくる。

その子どもの動きに合わせて、わたしの目が動く。この連動も楽しい。ここでも、時間はゆっくりと引き延ばされて、起こっていることが丁寧に述べられる。この時間のおだやかな動きが、おのずから春の空気を匂わせるのかもしれない。1首は、桜へと視線をうつす。

上の句で提示されたひとつながりの動きは第四句で大きく変化する。まばたき。目で追って、またまばたき。まばたき、という一瞬もやはり、まばたくたびに桜が開く、と展開されることで、引き延ばされる。その一瞬一瞬ごとに、桜が捉えなおされる。桜はもう咲いていて、いま、ずっと咲いているのだけれど、目を閉じるとわたしはそれを見ることができない。だから目を開くたびに、桜もまた開くのだ。いないいないばあ、のようだ。視線と時間の流れが織り合いながらひとつ空間をもった1首である。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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