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最も心に残ったこの連作2018(4)

(4)30首以上の連作

心に残ったこの連作2018であげた18の候補から、今年、最もこころに残った連作5篇を、以下のように選びました。

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「クリームパンと担々麺」50首(鯨井可菜子・田村元、現代短歌4)
「毛とニキビと」35首(菊竹胡乃美、九大短歌8)
「光る夕立」30首(吉川宏志、短歌研究10)
「青みなづき」33首(日高堯子、短歌往来9)
「コーポみさき」50首(山階基、短歌11)

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「クリームパンと担々麺」50首(鯨井可菜子・田村元、現代短歌4)
二人五十首、という形式のなかで、とくに印象に残りました。日記というスタイルのうえに五十首がのっていたからかもしれませんが、二人が影響しあいながら交互にうたをやりとりするだけとはちがう展開があって、刺激になりました。ラリーではなく、同じチームという感じがあったからかもしれません。この形式の可能性、この形式でまだまだいろんなことができそうだ、ということをおもわせてくれた一連でもあります。


「毛とニキビと」35首(菊竹胡乃美、九大短歌8)
はじめて読んだときの衝撃が、いまのいままでずっと残っていて、その感情に圧されるように選びました。文体や、話題や、自分の差し出し方に特徴があって、剝き出しの迫力が、最後まで一連を読み通させる作品でした。一方で、どこかコミカルであり、フィクションのおもしろさと、ノンフィクションの生な感じとが入り混じるような、不思議な読後感が今でもあります。初期の松本大洋のことを、すこし、思い出しました。


「光る夕立」30首(吉川宏志、短歌研究10)
平成じぶん歌、という企画の中から1つ選びました。1首1年で平成の30年間を振り返るというもので(厳密にそうでない、あるいはそもそもそういうスタイルをとらない作品もありました)、吉川さんの得意とする一首で勝負する、という歌柄が活きた連作だったとおもいます。出来事だけでなく、そこにはりつく感情や、他者へ向ける視線と同じくらい厳しい自分への視線が、濃厚にえがかれています。


「青みなづき」33首(日高堯子、短歌往来9)
とくに構成面で、もっとも印象に残った作品です。必ずしもゆるやかに話題をつないでなめらかに展開するのではなく、大きく4部に分けて、そのなかでひとつひとつの場面を詠んでいく、というスタイルが特徴です。たとえば1首、1首がずらっと(たとえば)50並ぶ、というスタイルも連作と呼べるのか、連作としてどうなのか、という連作における配列のことや、展開のことを考えさせられました。連作の密度、ということもおもいます。


「コーポみさき」50首(山階基、短歌11)
「長い合宿」につづく、ルームシェアを題材にした一連で、「長い合宿」のドライブ感とはちがう、ひとつひとつ丁寧にやすりがかけられた木工細工のようなうたが、ずらっと50首ならんだ、やわらかな一連でした。山階さんも、吉川さんと同じように、1首の独立性ということを大事にしているように思いますが、その1首1首が飛び石のようにさまざま配置され、緩急ありながら渡っていくうちに景色をかえながら対岸にたどりついたような、そういう読後感をいだきました。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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