凡フライ日記

山下翔と短歌

一日と一生

 12月になると、就職活動が本格的にスタートする。具体的にはエントリーが開始され、会社説明会などがある。そんな就活をテーマにした50首詠が今月の角川短歌にある。

・たかいたかいされるような面接だ冬の終わりの小さき密室
     廣野翔一『短歌(角川/2013.11)「クロスロード」』

 幼い子どもにする「たかいたかい」のような面接だと言う。手の上で転がされるような、もてあそばれているような、そんな気がしている。立場がはっきりしていて、緊張感と余裕がない交ぜになったような密室。冬の終わり、明るい兆しがまだ見えていないのかもしれない。焦りというよりはもどかしさがある。

・面接の終わりしビルは夕あかり一日(ひとひ)で決まる一生(ひとよ)はなけれど
     吉川宏志『青蝉』

 就職活動のさなか、面接をする側だろうか。たった一度の面接で人生が決まるわけではない。そんな人生なんてありはしない。これまでやってきたことが積み重なって、それは一つのきっかけにはなるかもしれないが、だからといってそこで未来のすべてが決まるわけでも、人生に対する評価がくだるわけでもない。わずかだが、夜へむかって明るくなってゆく。

 一日と一生とあれば、次の歌が思い出される。

・観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)
     栗木京子『水惑星』

 恋人であれ、友人であれ、サークルの仲間であれ、高校の同級生であれ。誰かと一緒に楽しい時間を過ごしているとき、ふと、われにかえる、というようなことがある。しんみりとしあわせを感じるひとときがある。自分にとってはすごく意味のあるような、ありがたいような、そんな出来事のように思い返されるのだ。

・観覧車は二粒ずつの豆の莢春たかき陽に触れては透けり
     杉崎恒夫『パン屋のパンセ』

 観覧車を「二粒ずつの豆の莢」にたとえていて、それが春の雰囲気とマッチしている。冬が終わって、春の陽射しの強さや明るさやあたたかさのなかに観覧車が映えている。そんな穏やかで、ほんのりと幸せな、そんな一瞬のある喜び。悲しいことやつらいことが絶えないからといって、そういう小さなものを見失わないでいたい。
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する