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やまなみ(2020年9月号)十首選

家ごもり何もせざりし一日にて夕食ごろはくつたりと居り
   大我幸藏

顔の汗心ゆくまで洗ひたり地下二十メートルの夏の井戸水
   上田貴代

東京はむしむしゴロゴロすると言ふ天気予報を聞きつつをりぬ
   西尾朋江

三か月ぶりに教室ひらかれて白百合ふたつ丹念に描く
   山田利夫

観察用メガネいただき眺むれば日蝕はその時をたがわず
   相良信夫

ぽつこりと日傘ひらきて水無月の思ひ出一つ胸にあたたむ
   島しづか

ことごとにこころ騒めく日々なれば籠いっぱいの洗濯はじむ
   古賀信之

梅雨空の雲の濃淡見ていたり費やすべきは時間なのかと
   桜又栄一

母の手を諸手につつみ二ケ月の空白うめる 元気で良かった
   月足いつ子

駿河湾釜あげしらす一キロが友より届く大雨の中
   加藤かつこ


(順不同)
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五七・五七・七

短歌は五・七・五・七・七の五句三十一音からなる。この「五句三十一音」ということに関しては、大きくふたつの立場があるようにおもう。

(1)五つの「句」からなる、ということを第一に考える立場
(2)五句はともかく、トータルで「三十一音」であることを守る立場

である。(1)については、たとえば上の句・下の句ということばがあるが、これは「五句」が

(a)「五七五」「七七」という、二つのまとまりからなるという立場

である。ほかに、

(b)「五七」「五七」「七」という、三つのまとまりからなるという立場

も考えられる。長歌は「五七」を三回以上くりかえし、最後に「七」を添える形をとる。この「三回以上」の部分が「長」に対応するならば、それを「二回」にして「短」をあてる、というのは自然なことのようにおもう。

そういったことは考えずに、

(c)「五」「七」「五」「七」「七」は対等であるとする立場

もあるだろう。わたしとしては、(1)(a)の立場でこれまでうたを作ってきたと、振り返ればおもうが、必ずしもそういうやり方ばかりではないということを、ときどき意識したいとおもって、これを書いている。また、読みにおいては、どの立場にたって読むのがよいか、というのは、必ずしも自分の立場からではないやり方でのぞむことがいい場面もあるようにおもう。

たとえば「句切れ」という概念は、どの立場で考えるかによって、いくらか違ったものに見えてきそうだ。

むろん

(3)「五句」も「三十一音」もさして重要視しない立場

もある。いまは「五七・五七・七」という考え方に興味がある。

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2017年発行の企画同人誌です。わが家にいくらか在庫があり、しばらく即売会などの機会もありませんので通販をやっております。

頒価は1,400円(送料等込み)です。

受注しだい、ただちに発送しております。

〈内容〉

阿木津英  ✕  山城周
紀野恵   ✕ 佐藤真美
穂村弘   ✕ 寺井龍哉
水原紫苑  ✕  睦月都
光森裕樹  ✕ 濱田友郎
盛田志保子 ✕ 佐々木朔
渡辺松男  ✕  山下翔

以上14名、7タッグによる企画同人誌です。参加者の新作10首も同時掲載。



     *

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8月の連作

2020年8月の諸誌紙から、気になる連作をピックアップします。(順不同)

     *

黒﨑聡美「得意げ」12首(「うた新聞」8月号)
〈木曜に来たからモクという猫のおなか撫でていたむかしの夏に〉という一首ではじまる。四句に生のことばが放り出されたかとおもえば、結句では「むかしの夏に」という書きことばの緊張があって、その緩急に引き込まれる。一首にある感じ方のおもしろさ、書き方の独特なところが、一連にゆるやかなまとまりを与えているようだ。

志野暁子「石」3首(「うた新聞」8月号)
昭和ひとけた生まれの特集から。「石」とは「百度石」のことで、はじめ二首にうたわれる。〈草陰にひつそりとある百度石識る人もなし雪に濡れつつ〉、「ひつそりと」したうたい口が印象的な一連三首である。大きな形ではなく、「識る人もな」いもの・ことを静かにうたうところに、圧してくるものがある。

田村元「ビール券」5首(「現代短歌新聞」8月号)
このところの生活をうたった小品。〈叔母の字でメモが添へられ手作りの〈オバノマスク〉が三枚届く〉など、生活の変化をどこかたのしむ姿に特徴があると言えようか。メモ書きの〈オバノマスク〉は「叔母」さんのユーモアだろう。二枚ではなく「三枚」というのも張り合う感じがあってたのしい。

古谷円「大夕焼け」5首(「現代短歌新聞」8月号)
「父母のいない実家」をめぐる一連五首。〈青空を注ぎにゆこうか父母のいない実家のくらやみを開け〉、もう誰も住んでいないのである。大きなうたい起こしにまず掴まれる。その「父母のいない実家」であるが、「もういらぬ」のであり、しかし「感情やどす」のであり、けれども「生家ともらず」なのである。大きうねりある一連。

睦月都「王さまと政治家」10首(角川「短歌」8月号)
二首目〈春の日をこもりてをれば机がだんだんやはらかくなりて卵も割れぬ〉といったはみ出していく文体にいくぶんおどろきながら、連作の終盤へかけての盛り上がりがこころに残った一連。〈星からも遠い日は肉をもむやうな肉筆で手紙書きつけてゐたり〉の「肉をもむやうな」は直喩だが、隠喩とともに緊張感のあるのにつかまれる。

田村元「鶯色」13首(「短歌往来」8月号)
やはりこのところの生活をうたった一連で、ひとりの人のこころの動き、行動の記録、という感じのささやかなうたの積み重ねが、忘れかかっていた日々のひとつひとつを思い起こさせる。〈町内のドラッグストアに満ち足りぬこころはバスで駅前に出る〉、町内でことたりるかもしれないが、そういう日々がかさなれば、「満ち足りぬ」ということにもなろう。「駅前に出る」べきかいなか、を外部から判断されるいわれはないのである。

鈴木ちはね「tokyo2020」20首(「ねむらない樹」vol.5、2020.8)
結句にむかって絞られていく、という感じのない一首のあり方にたちどまりつつ読んだ。〈それにしても大塚愛はどんな日を「泣き泣きの一日」と思ったのだろう〉〈公園でキャッチボールがきれいだね どんどん距離が広がっていく〉〈公園の滝は工業用水を循環させている夏の滝〉など、体や思考が世界に滲みでていくような印象がある。

斉藤斎藤「エッセンシャル・ワーク(2)」20首(「歌壇」8月号)
つづきもので、今作は「IV 6月第4週」と「V 4月第2週/6月第4週」からなる。Vでいきなり紙面がまっくろになっておどろいたが、引用がゴシック体で書かれているようだ。うたも引用だらけになっていく。それがさらに後ろのほうにいくと、詞書と短歌のポイントまで逆転しながら、なにかおどろおどろしい感じになっていく。

花山周子「五月九日から六月七日まで」30首(「歌壇」8月号)
日付のあるうた。五月十日(日)、〈腹這いで生理痛をやり過ごす地面のような午後の時の間〉、「腹這い」も「地面のような」も「時の間」もすごくてくらくらする。これが五月二十日(水)には〈腹這いで漫画を読んでいる娘が一年ごとに巨大化しおり〉につながっていく。絞り切る、という感じの迫力がとぎれることなく続く一連。

【完売しました】詠草集8の通販を開始しています

昨年の4月におこなった第5回山下翔キャラバンのうたをまとめた「山下翔詠草集8」の通販を開始しています。

50部限定で、頒価は1,500円です。
【完売しました 2020/8/9】
(のこり1部です 2020/8/8)
(のこり7部です 2020/8/6)
(のこり10部です 2010/8/5)
(のこり13部です 2020/8/4)
(のこり15部です 2020/8/3)
(のこり16部です 2020/7/31)
(のこり17部です 2020/7/30)
(のこり18部です 2020/7/29)
(のこり21部です 2020/7/28)
(のこり22部です 2020/7/26)
(のこり27部です 2020/7/18)
(のこり29部です 2020/7/7)
(のこり30部です 2020/7/4)
(のこり32部です 2020/7/1)
(すでに17部の予約をいただいており、じっさいには残り33部です 2020/6/30)


ただちに発送しております。

〈内容〉
8日間のキャラバンでめぐった九州各地(大分、宮崎、鹿児島、熊本、長崎、佐賀、福岡)にちなんだ15首連作+エッセイのセットを20篇収録しています。



組版・装幀を山階基さんにお願いしました。

以下、目次です。

     *

博多    桜は長し
小倉    顔にあたる
大分    日輪
日豊本線  フェニックス・ハネムーン
橘通り   蛙の声
宮崎    おもしろい
木花台   球も人も
日南海岸  あくがれブルー
清武    家の鍵
都城    よくはづむ
鹿児島   眼やさしく
八代    不安
大津    IPA
熊本    ほとほと
諫早    松下さん
長崎    沈黙しつつ
西彼杵   岡と浜
針尾    さくら祭り
佐賀    はじめて泊まる
天神    もうすぐ

     *

お申し込みは、部数およびお送り先の郵便番号、住所、氏名を明記のうえ、s.ohsamay@gmail.com(@を半角にしてください)までメールしてください。TwitterのDMでもかまいません。

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     *

発行日 2020年8月8日

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎『温泉』ご購入はこちらから。現代短歌社のオンラインショップです。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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