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短歌研究2020年5月号

280人、作品特集の号をひといきに読んだ。そうでないと読み終えられないような気がして。巻頭の馬場さん以外は7首連作。レイアウトの都合で厳密ではないが、おおむね五十音順。これが全体を通して読むときに、いいように作用しているかどうかはちょっと考えさせられた。世代じゃないけれど、ある程度、共有している空気感や、文体や、そういうものがあるなかで読み比べるのと、そうじゃないなかで読み比べるのとでは、浮かび上がってくるものがちがってくるんじゃないか、みたいなことをおもった。

7首というのは短歌研究では定番の歌数で、レイアウトもこれまでを踏襲した感じ。むずかしい歌数だなあ、とおもう。

たとえば10首こえてくると傷が目立ちにくくなるが、7首だと連作全体への影響がわりと大きい。一方で、いい歌が4首くらいあっても連作としての印象がぼんやりしている場合もあって、これが5首とか3首だとうまくいくのになあ、とおもうことがある。

作風に対してどうか、ということもある。もっと歌数があったほうが、この文体、この歌柄がいきるなあ、ということがある。7首ではものたりないが、15首くらいになってくると凄みが出てくるというか。あるいはこの話、もうちょっと枝葉のところがあると臨場感が出てくるんじゃないか、とか。

7首のなかにテーマやモチーフがわりあいわかりやすい形で二つ三つあると、ぼそぼそした感じになる。いっこのテーマというか話題でけでおしとおすには、ちょっとだけ多い。

くわしいことはまた5月の連作に書きます。
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歌集『温泉』

2018年8月に、歌集『温泉』を上梓しました。
購読をご希望の方は、現代短歌社のWebページをご覧ください。
購読方法、取り扱い書店など記載されています。

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作品は、2015年夏から2017年夏までのおよそ2年間に制作したものを、ほとんど時系列に沿って並べています。年齢で言えば、24歳のおわりから26歳のおわりまでの作品です。

歌集としてまとめるにあたっては、所属する「やまなみ」誌に載った月々の作品に、「九大短歌」「歌壇」「現代短歌」「現代短歌新聞」など各紙誌に発表した作品、および未発表作品を合わせた約750首を、350首程度に絞りました。

栞文は外塚喬さん、島田幸典さん、花山周子さんに賜りました。ありがとうございます。

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感想、批評をいただいています。ありがとうございます。(随時更新していきます。)

○ネット上で読めるもの
松村正直さん ブログ「やさしい鮫日記」
恒成美代子さん ブログ「暦日夕焼け通信」
岩尾淳子さん ブログ「眠らない島」
伊舎堂仁さん note
大橋春人さん ブログ「うたぐらし」
平岡直子さん 連載「日々のクオリア」
とみいえひろこさん note

○総合誌などの紙媒体に掲載のもの
・野住朋可さん 書評「歌集『温泉』山下翔」——隣の芝生~短歌探訪~(『奎』7号、2018.9)
今月のスポット(『短歌往来』10月号、ながらみ書房、2018)
・富田睦子さん 時評「「私」という武器」(『短歌』10月号、角川文化振興財団、2018)
・大松達知さん 書評「虎のような歌」(『現代短歌新聞』10月号、現代短歌社、2018)
・浅野大輝さん 書評「重ね描かれる遠近」(『現代短歌』11月号、現代短歌社、2018)
・大辻隆弘さん 時評「母への視線」(朝日新聞2018.10.21朝刊)
・藤田千鶴さん 書評(『短歌研究』11月号、短歌研究社、2018)
・石井大成さん 評論「海老と衣」(『九大短歌』第八号、九州大学短歌会、2018.10)
・藤野早苗さん 書評「澱の味わい」(『灯船』第11号、灯船の会、2018.11)
・尾崎まゆみさん 歌集歌書展望(『短歌研究』12月号[短歌年鑑]、短歌研究社、2018)
・伊藤一彦さん 季評「山下翔「温泉」」(朝日新聞[朝刊、西部本社版]、2018.12.4)
・田中俊廣さん 季評「第一作品集の光」(毎日新聞、2018.12.23)
・早川晃央さん 書評(『コスモス』1月号、2019)
・桜川冴子さん 季評「歌うことへの静かな覚悟」(読売新聞[朝刊、西部本社版]、2019.1.26)
・田村元さん 書評「〈懐かしさ〉の奥にあるもの」(『ねむらない樹』vol.2、書肆侃侃房、2019.2)
・梅﨑実奈さん レビュー「グレーがいちばんむずかしい」(『ねむらない樹』vol.2、書肆侃侃房、2019.2)
・一ノ関忠人さん [読みましたか?この一冊](『現代短歌新聞』2月号、現代短歌社、2019)
・山川藍さん 書評「機嫌のいい人」(『短歌研究』4月号、短歌研究社、2019)
・山川藍さん 評論「立体的な歌」(『まひる野』6月号、2019)
・小黒世茂さん 歌集歌書を読む(『短歌』7月号、角川文化振興財団、2019)
・江村彩さん 書評「恋しさの吐露——ふるさとを、人を」(『井泉』第88号、井泉短歌会、2019.7)
・後藤由紀恵さん 書評「温泉に浸かる」(『まひる野』9月号、2019)
・竹中優子さん 書評「よいお年を」(『うた新聞』9月号、いりの舎、2019)
・檜垣実生さん 歌集紹介(『かりん』10月号、2019)
・川村真由美さん 歌集紹介(『沃野』11月号、2019)
・宮﨑和子さん 歌集紹介(『沃野』1月号、2020)

○その他
・米川千嘉子さん 「私が選んだ今年の歌集」(毎日新聞)に挙げていただきました。
・大辻隆弘さん、富田睦子さん 「2018年の収穫歌集」(『現代短歌新聞』1月号、2019)に挙げていただきました。
・岡崎洋次郎さん 「2018年のベスト歌集・歌書」(『短歌往来』3月号、2019)3冊のうちの1つに挙げていただきました。

○評論などで引用
[太る]
・小島なおさん 評論「太る歌」(「COCOON」14号、2019.12)
[おもしろい]
・藤島秀憲さん 評論「今どきのおもしろい歌」(「短歌往来」2月号、2020)
[旅]
・梅内美華子さん 評論「多様性の中で個々の体験を――旅を詠むテクニック」(「現代短歌」11月号、2019)
[ジェンダー]
・川野芽生さん、黒瀬珂瀾さん、佐藤弓生さん、山階基さん 座談会「短歌とジェンダー」(「ねむらない樹」vol.4、2020.2)

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3つの賞をいただきました。まことにありがとうございます。

・第44回現代歌人集会賞
・第49回福岡市文学賞(短歌部門)
・第63回現代歌人協会賞

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読む会、批評会などのイベントの記録です。

・山下翔×染野太朗トークイベント「歌集『温泉』の魅力を引き出します&いま気になる現代短歌」@本のあるところajiro 2019年2月3日(日)
・『温泉』を読む会@福岡 2019年4月14日(日)
・パネルディスカッション「山下翔『温泉』はいい歌集か?」 2020年4月26日(日)延期

4月の連作

2020年4月の諸誌紙から、気になる連作をピックアップします。(順不同)

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松本典子「ひとも街もこゑも」10首(「短歌往来」4月号)
特集「天変地異を詠む」から、昨年の台風の現場をうたった一連。〈にぎりかへす手のある老いからひとり抜けふたり抜け避難すらできぬ母〉、こういうときでも順番というものがどうしてもうまれてしまう。「長引く停電で器械による搾乳も加工もできず」という詞書のついた〈しぼつては棄てしぼつては白き乳を棄てそれでも救へなかつた牛たち〉もいかにもいたましい。平時というのが、さまざまな絡み合いとバランスのうえに成り立っているのだということがよくわかる。力のこもった文体は作者のものだが、現場をつたえてなまなましい一連である。


金澤和剛「一歳児」8首(「短歌往来」4月号)
なんとも不思議な作品群で、気をひかれてひといきに読んだ。二首目〈紙おむつ替えるときふと手と脚の数をかぞえる 四の倍数〉、「手と脚の数をかぞえる」時点でだいぶヤバいのに、そこから「四の倍数」にたどりつくのでいよいよ本物という感じがする。ふつう「ふと」は悪手とされることがおおいが、ここでは「ふと」にこそ真実みがあって、のけぞってしまう。〈ニュース速報のテロップ見送ってすまし顔でお風呂に入りましょう〉、この唐突のいざないにおののく。


田村元「ポトスライム」20首(「短歌研究」4月号)
一首目〈朝九時のオフィスグリコの百円を誰かが払ひ「ペイペイ」と鳴る〉につかまれる。「ペイペイ」と鳴る、ってまるで鳥みたいだ。鳥だったら「鳴く」だから、当然「鳴る」のは機器なのだが、ここに「ペイペイ」との距離感があらわれているようで面白い。デフォルメの面白さである。〈かばんの底に米つぶ一つ付いてをり四十二歳のわれの米つぶ〉も、「四十二歳のわれの」というピックアップの仕方に妙味がある。


花山周子「長生き 二〇二〇年一月〜二月」20首(「短歌研究」4月号)
花山さんはあるところから、独特の破調文体のようなものを得ていったような感じがあり、そこにごりごりと力のある文語がきしむように重なり、ある説得力がうまれているようにおもう。〈花山さん長生きしそうと言われしこと時々思い出す嫌だったので〉〈わが娘言いたくないこと言わずおり言えばいいのにとわれは思うも〉、いわゆる口語文語のミックスとはまるでおもえない。〈やりたくなさが全面的な夕暮れの手をついて机から立ち上がる〉、〈真顔〉ということをおもう。


篠弘「汗のたなぞこ」20首(「短歌研究」4月号)
一首目でまず「心不全」と話題をさしだされる。二首目〈朝ごとに己が体重計りきて減りつづくれば竦(すく)む思ひす〉の「竦む思ひす」にひやっとする。音韻的な効果もあるだろう。息の抜けるような弱さがある。〈いくたびも目薬を差し避けがたき終末としていかにしならむ〉〈つづけざまに老人逝けりくちびるの渇きやすかる寒明けの日々〉など、自然なうたいくちのなかに、生気のうすさのようなものがただよっている。


島田幸典「碑の蟻」30首(「短歌研究」4月号)
飛行機で電車でバスで、どこかへ出掛けている連作のおおい作者である。一首目〈岡山に聴きはじめたる「合唱」の人間の声は広島に聞く〉、地名の把握の仕方などから新幹線かとおもいながら読んだ。後半には飛行機も出てくる。道中、あるいはいった先での点々とした光景が精緻な文体でえがかれる。〈炒飯の残る一山に酢を回しレンゲに崩し搔きこみにけり〉の「酢を回し」の周到、〈機窓より見おろす阿蘇のゴルフ場立木に付きてうすき影伸ぶ〉の「機窓」「立木」の正確など。


山木礼子「朝」30首(「短歌研究」4月号)
〈泣きやまぬ子を抱いたまま階段の段を転がりおちてやらうか〉〈腫れた心がときをり汁を流すだろ 泣いて気がすむなら泣きなさい〉。そのときそのとき突発的に、あるいはなにか蓄積されながら、「子」と「わたし」が投げされるようにこの世に存在している。連載、連作のながれのなかで後ろから二首目〈とても年をとつた日の朝 ふたり子もすつかり年をとつてる朝に〉が、強烈な臨場感を出している。「とても年をとつた」のどこかつたない印象は、それがイメージできないくらい遠くのことに見えていることを示唆している。


大口玲子「自由」28首(角川「短歌」4月号)
昨年の「椿の夜に」にひきつづき、今年もこの28首連作にたちどまる。〈図書室登校ながく続けば「お母さんの給食も出せます」と言はれたり〉、そういうものなのか、とおどろきつつ読む。「学校」と「息子」、そのあいだの「わたし」をめぐる一連である。〈牧水賞二次会に来て「こち亀」を読み続けゐる息子を憎む〉。『ザベリオ』からさらに踏み込んだところで息子への眼差しがある。ひとつひとつの場面が鮮明である。


大松達知「毛茸」10首(角川「短歌」4月号)
語り口おおらかに、こまかなところをぽつぽつとうたう一連。うたが重なるごとに全体がわかっていく、というとどの連作もそうなのだが、この一連においてはまさにそのことを体感しながら読んだ。〈憂いことを離れて憂さは残りたり声の壊れる午後の教室〉、「憂い」と「憂さ」の差異をおもう。〈ふるさとはさつまいもにも薩摩にもあらねど飲めり飲めばふるさと〉、「さつまいも」「薩摩」の反復が、遠さゆえの「飲めば」の「ば」の強さをもたらすようだ。


染野太朗「稼ぎがよい」12首(角川「短歌」4月号)
一首の形に熱量がおよぶような一連である。〈きみをまへにことばはただの声になる大阪市在住四十二歳のこゑ〉、意味あっての「ことば」だが、そうではない、「ただの声」、動物的といってもちがう、「こゑ」になる。〈からめあふほどに引きのばされてゆく夜、冬の夜、怖れと舌と〉、直裁な表現が、一首のなかでじっさいからまりあいながら現場を伝えてきてとりこまれる。〈「美男子と煙草」を読めばかなしもよ「恐れいります。」も「たまらねえ。」も〉の切なさ。


野田光介「白いきのこ」12首(「現代短歌新聞」4月号)
自在な引用やある軽さに作風がある。たとえば一首目〈たくさんの白いきのこがどってこどってこ宮沢賢治をキンドルで読む〉、三句までが「どんぐりと山猫」をおもわせて宮沢賢治の序詞になっている。五首目〈向い風吹く野の道に妻と吾と帽子おさえてつくつく歩む〉、「帽子おさえて」に臨場感がある。さらに「つくつく」が心情やキャラクターをおもわせる。


吉川宏志「みなそこ、水面」15首(「うた新聞」4月号)
なにか示唆的な〈みなそこに泥さむざむと沈めども水面(みなも)は春のひかりをはじく〉という一首から始まる。「みなそこ」と「水面」との対比である。国敗れて山河あり、ではないけれど、一連で展開されるのは新型コロナウイルスをめぐる状況と、いまのこの春という季節についてである。大きなうたと小さなうたがいりじまじって印象的な一連である。

3月の連作

2020年3月の諸誌紙から、気になる連作をピックアップします。(順不同)

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山中律雄「甲乙」7首(角川「短歌」3月号)
一首目〈平面に見ゆる広場の幾ところ雨残れるは起伏あるらし〉からちょっと、おっとなる。平面に見えるけれど、ところどころ雨が残っているということは、そこに起伏があるということだろう、といううた。視点と、その述べあらわし方にたちどまる。〈泥に泥かさねるごとき倦怠に今朝も朝よりうつしみ重し〉の比喩に納得する。「今朝も朝より」の「朝」の重なり、「泥に泥」のかさなりがスライドするようで、音韻的たのしみもある。作風のようなものを全体に感じられる一連であった。


田村元「炭酸泉」5首(「うた新聞」3月号)
田村さんもぶれずに、というべきか、いくつかの話題をながいこと突き詰めつづけている歌人である。その〈徹底〉がおもしろさへ転換しているようにおもう。〈「ほ」と打てばホッピーと出る変換の予測の先にホノルルはあり〉、みずからにもっとも近いもの「ホッピー」、そして遠いものとしての「ホノルル」。近いところと遠いところの接合はある定石だが、ぶれずに「ホッピー」であるところや、「ホッピー」「ホノルル」の語感のたのしさなど、作風というか歌柄というか、そういうものを感じさせる。


岡井隆「唄とノルマ」7首(「未来」3月号)
岡井さんの月詠を1月号から読んでいて、どれもたのしいのだが、親近感もあってこの3月号の作品を挙げる。一首目〈室内のフロア歩きのノルマでは「箱根の山は」を唄ひつつ行く〉、「歩きのノルマ」が課せられているようで、「箱根の山は」うたいつつ、それをこなしている様子である。からだのためだろう。二首目以降、この話題がころがりころがりして、その奔放な感じがいかにも岡井さんらしい。それが最後の七首目でかえってくる、という構成。


早川晃央「お別れを待つ」12首(「COCOON」15号、2020.3)
挽歌一連。〈九五歳の死因の第三位・老衰は祖母の息をとめたり〉、死をどのように理解し解釈するか、というところに関係性やおもいがにじむ。おのずから、ではなく、能動態でかかれているところにたちどまった。〈十五年前の一五の夏休み祖母が誘ってくれた「コスモス」〉、具体的な数字とさっぱりとした語り口が、「コスモス」結社内同人誌である「COCOON」の誌面ではいっそう迫ってくる。〈寒いねと言い出したとき「お別れ」の順番が来て経が始まる〉、タイミングはいつもむずかしいし、いきなりやってくる。ディテールに真実がこもるような一連だった。

2月の連作

2020年2月の諸誌紙から、気になる連作をピックアップします。(順不同)

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池田はるみ「初の子年を」33首(「短歌往来」2月号)
前半、「ばあば」詠とはちがった側面がおもてにたった一連で、文体はわりあいさっぱりきっぱりしている。その中に〈寝る前に「もうしんどい」とわが言はぬしんどいはまだ少し先だよ〉〈遠き日のこのマンションはおつとりと妻が守れる空間だつたよ〉といったうたがさしはさまれ、この「よ」の口調に「ばあば」がちらっとうつる。語りかけのうただが、一連に物悲しさをあたえるようで、後半の「ばあば」詠への誘導にもなっているようだ。


大平千賀「ローリエ」5首(「うた新聞」2月号)
ささやかながら、一首一首にうまみがあって、引き締まった連作とおもう。〈浴室の窓を覗いて淡雪がすみずみに落ちてゆくのが見える〉、まだ雪の落ちていないところを埋めるように「すみずみに」まで降りおちる淡雪。〈夜の庭にローリエの葉を摘みとって涼しく香る手のひらとなる〉の「なる」。どのうたも体温のようなものを共有していて、それが一連をゆるやかにひとまとまりのものにしている。

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ほかに2月に読んだ連作から。

小島なお「蟹剥き」12首(「COCOON」3号、2017.3)
四首ひとかたまりの話題が三つ置かれるような構成。二つめ、三つめにはそれぞれ「糸魚川の大火事」「茂吉のふるさと」と詞書がつく。全体として無理にひとつらなりになるようにしている、というふうではなく、だからといってまったくばらばら、というふうでもないのがいい。どのパートにも印象的なうたがあった。


松井恵子「黒蜜」12首(「COCOON」7号、2018.3)
前半五首、〈妊娠の分かつた日から夕焼けの光にチェロの音が混ざつた〉からはじまり、妊娠から出産までという気持ちになりながら読む。ところが六首目、〈音読の声に広がるひらがなの花びら揺れてゐる子供部屋〉とあって、時間の感覚をすこし調整する。二人目とか三人目の子どもを妊娠しているのか、あるいはもっと大きな時間幅で一人の子の妊娠を振り返りつつ今にかえってくる連作なのか。あまり気にせずに読みとおせたのは、一連がストーリー展開によらないからだとおもう。うたとうたの、なにか緊張感のようなものに統一感があった。


牛尾今日子「旅日記拾遺」10首(「八雁」2019年11月号)
一首目の詞書に「ウズベキスタン」とあって、これが全体におよぶのだとおもう。その土地の空気感と、そこにはいりこんでしまった「わたし」が、その体感がえがかれる。〈どうしてか見てたらわかる日本から来た女の子わたしのほうも〉、ちょっとした挙動や、その人のまとっている気のようなものから、「わかる」し、同じようにむこうにもわかられる。〈みぎひだりに尻尾を振って歩いている牛を抜かして子牛も抜かす〉、四コマ漫画のようなたのしさがある。

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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