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1首鑑賞210/365

震度2の地震に火災報知器の紐がゆれてる 静かだった
   二三川練『惑星ジンタ』

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体感でどのくらい揺れがわかるものなのか、震度2というからそれほど大きいものではない。「火災報知器の紐が」かすかに「ゆれて」いるくらいで、そのほか目立った変化はなかったのかもしれない。あるいはそのなかで、垂れている紐のゆれる場面だけが印象強くのこったのだろう。一字空白があって結句「静かだった」。この欠落の一字が独白の緊張感をうんでいる。

短歌日記210/365

8時起床。95.6キロ。映画「天気の子」「アルキメデスの大戦」をみる。

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落とし物の財布の中身かぞへつつ係の人と息合つていく

1首鑑賞209/365

在りし日の息子の友ら呼ぶ聞けば まあ まさやん まささん ふじいさん
   藤井征子『夏の庭』

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生前、息子がどう呼ばれていたか、なかなかそのすべてを知ることはないとおもう。わたしの場合も、そのつど関わりのある人によって呼ばれ方はさまざまであった。ここで具体的に列挙はしないが、そのひとつひとつにおのずと関係性がにじむ。このうたでは結句の「ふじいさん」がことに切ない。前みっつは名前から派生したあだなだが、さいごのひとつは名字からである。ふたつのベクトルを張ることによって、平面的なひろがりがうまれている。

短歌日記209/365

9時起床。95.8キロ。『桜の庭に猫をあつめて』(江國梓、角川文化振興財団)を読む。

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カルデラのへりよく冷えて大盛りの白飯食へり湯気はふきつつ

1首鑑賞208/365

病室を離れ来たりて樹の下に夏を限りの蟬の声聞く
   藤井征子『夏の庭』

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詰めていた息をこぼしに出たのだろう。樹の下に涼しい風でも吹いていればいいが、いかにも暑そうである。蟬の声がわんわん鳴る。しかしいくらか、解放感もある。ひととき気の休まる時間である。おもうところがあって、樹の下にたたずむ。「夏を限り」の切なさは、「病室」にこもる人の姿をおもえばこそ、とおもわれてくる。しずかな光景だ。

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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