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1首鑑賞181/365

郵便受けにいろいろの鳥は来て止まりおしるしのやうに糞を残せり
   馬場あき子『あさげゆふげ』

     *

郵便受けに糞がついている。あの鳥もこの鳥も、ここに来て糞をしていったのだ。その糞を「おしるしのやうに」とうたったところにこのうたの独自がある。縄張りのように、ではなく「おしるし」であるから、おのずと親近感が滲んでくる。この生き物に対する距離感は、(繰り返しになるが)この歌集にいくどとなくあらわれる。「縄張り」でなく「しるし」、「しるし」ではなく「おしるし」。愛おしくおもう眼差しがある。
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短歌日記181/365

9時半起床。93.5キロ。曇り。ぬるくもなく湿ってもいない風がここちよい。

     *

中三になるまでの四年見てをれば答案の字も丸くなりたり

1首鑑賞180/365

鉛筆を持ちたるままに眠りゐき覚めて明るき春におどろく
   馬場あき子『あさげゆふげ』

     *

つい先日、飲んだ帰りの路傍でそのまま眠ってしまい、場所を二転三転しながら朝を迎えたことがあった。ほんの二三時間のあいだであったが、不気味なくらい明るい、それなのに人通りの少ない朝の街なかを不思議のおもいで眺めていた。そういう妙な明るさが、掲出のうたにも感じられる。いわゆる寝落ち、ということだろう。なにか書き物をしていたか、枕元でメモをつけていたか、そのとき持っていた鉛筆を持ったまま眠ってしまった。は、っと目覚めたときにはすでに朝で、そのいかにも明るい空間に、春を感じとっている。「覚めて」は春という季節へもかかっているのだろう。

短歌日記180/365

7時半起床。93.1キロ。映画『泣くな赤鬼』を観る。

     *

泳げない夏がまた来て遠浅の水のおもてに背をあづけたり

1首鑑賞179/365

寒いのか寒くないのか布団より手を出してみる立春の朝
   馬場あき子『あさげゆふげ』

     *

率直に言うと、とてもとてもキュートな1首だ。布団にすっぽりはいって朝、目覚める。布団のなかはぬくいが、そとはどうか。手だけだして探ってみる。やっぱり寒いか。いや、ちょっとあたたかいか。その場面を想像してほほえましい。ただ、うたは結句の「立春」によって絶妙に締まっている。たんに今日寒いかどうかの話ではなく、大きな季節の移ろいのなかで、かすかな変化をたしかめようというふうな意味がかさなってくるからだ。立秋のかすかな秋の気配を「風の音」に感じとった古典に対し、立春のかすかな春の気配を、布団から出して手が触れる空気に感じとろうとするこの1首のスケール感にくらくらする。

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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