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短歌日記88/365

7時半起床。『親の落しもの』(唐津正明、私家版)、『石蓮花』(吉川宏志、書肆侃侃房)を読む。

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二杯目のごはんをまづは胡麻塩でひとさらひしてカツへ移りぬ

1首鑑賞87/365

終電の車内に雪が降り積もる 眠りましょう あと百年は
   安井高志『サトゥルヌス菓子店』

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終電の車内に雪が降り積もっていくなかで「眠りましょう」という呼びかけは、すごくよくわかる。いかにも「永眠」という感じがあって。ああ、それならいいかなあ、とおもう。でも、そのすぐあとに「あと百年は」とあっておどろく。そうか目覚めることが想定されているんだ。百年たったら目覚めるのか、もう百年でも二百年でも眠るのか。あるいはずっと目覚めないのか。わからないけれど、とりあえず、ひとまず、あと百年は、眠りましょうということだ。永眠、というと一瞬だが、百年眠るのはずいぶん長い。そのあいだ、雪が降りつづけるのか季節はめぐるのか。終電は始発になったり、折り返し運転したり、もうずっと車庫にあるのか、延々と百年のあいだ終電としてうごき続けるのか。「眠りましょう」という声は、そういう想像をいったんは掻き消してくれる。いいから眠りましょうよ、と。いつか目覚めるとしても、当分のあいだは、まああと百年くらいは、眠りましょう。眠るといいですよ。目覚めたら、そのときまたうごきだしたらいいですよ。そういうふうに声はきこえる。あるいはここで、眠ってしまったらもう二度と目覚めないような、死をそそのかすささやきなのかもしれないが。

短歌日記87/365

11時起床。このごろ窓を開けてから家を出るようにしている。

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飽きてなほやまざる欲のおんじきにおなかいつぱいのさくら苦しゑ

1首鑑賞86/365

卓上にこほり枕の口金(くちがね)が置かれてありてむかしのごとし
   有川知津子「大縄跳び」『COCOON』11号

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一連をとおして、密になりすぎないおおらかな文体がうたの内容を伝えてくる。なかでこの1首は第四句「置かれてありて」のじりじりとした引き伸ばしと、あっけらかんとした結句「むかしのごとし」がうたのあじわいになっている。

風邪などで発熱したとき、氷枕のうえに頭を載せて熱をやわらげる。氷枕という名付けの直截が発する雰囲気と、口金という語がよく調和し、それが第四句でいよいよ存在感をもって映る。むかしのごとし、というのもまさにそのままなのだが、「こほり枕」や「口金」あるいは「卓上」ということばとはおのずからひびきあっていてここちよい。氷枕そのものではなく、その口金だけが残って存在している、というところに、この1首の起点があるようにおもう。

短歌日記86/365

8時起床。『心底惚れた』(樹木希林、中央公論新社)、『宇宙兄弟』35(小山宙哉、講談社)、『平成こち亀 2年(下)』(秋本治、集英社)を読む。

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かはくだる筏のごとき連作にまみづあれ春はひかりを帯びて

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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