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1首鑑賞29/365

上昇ををはり雲の上にいでしとき煙草喫む人は煙草をのみぬ
   長谷川銀作『低い窓』

     *

飛行機の中、禁煙じゃなかったんだなあ、とまずおもう。ぐー、っと上昇している間は後ろに引っ張られるような姿勢で息苦しい。それが上がりきってしまえば解放される。そこで一服、というわけだ。子どもの頃、大人というのは酒を飲むのと同じくらい煙草を喫むものだとおもっていたが、今の常識はちがう。ひとつ時代の光景をとどめる1首である。

飛行機が上昇している間、しばらく雲の中を抜ける時間があるとおもうが、それを過ぎると、ぱっと視界がひらけてくる。一面晴れ渡っていて、はじめて目にしたとき、不思議なものを見たように感じた。そこにもひとつ、開放感がある。安堵の心持ちがある。同語反復のような下の句だが、煙草を喫む人は煙草をのみ、そうでない人は、たとえば旅の本を開いてみたり、飲み物を飲んでみたり、思い思いにこころを開いていく。そういう各々の感じが表れているようにおもう。

短歌日記29/365

ここ二三日、風邪っぽい。咳から始まって今は喉。じきに鼻へうつるか。しゃきっとしないなあ。

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馬鹿なフリしてるのバレてますよ、つて。馬鹿なフリしてることが馬鹿だよ

1首鑑賞28/365

朝のまの畳廊下の涼しさをいひつつ一人来二人来て寝る
   長谷川銀作『低い窓』

     *

去年の夏、旧伊藤伝右衛門邸を見学したときに畳の敷かれた廊下というものを見たが、あれが「畳廊下」だったかどうか。そういうものを想像してみる。

夏の寝床は、冷たいところを求めて寝返りをうっても、すぐにぬるくなってしまって、ばたばた寝返りをうつことになる。この夏はエアコンつけっぱなしであったから、その感じはもはや懐かしいものになってしまった。子どもの頃、寝つくまでは暑くてかなわんかったな、と思い出す。朝起きて、まだ早いうちは涼しくもあるが、じきに暑くなって汗が噴き出す。その、じわじわ暑くなってくる時間だろうか、「朝のま」の冷えた「畳廊下」に(廊下に!)やってきて、みな寝る。二度寝か。なにやら楽しげである。下の句はまさに動きが見えるようだ。

短歌日記28/365

はじめて買ったCDは「嵐」のデビューシングルだった。小学生の頃。CDを買う、というのがちょっと大人のことで、オシャレなことだったような気がする。違うかな。

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『親の落しもの』のち十年に発行をされたりし噫『きょうだいは70人』

1首鑑賞27/365

眼ざましの鳴れる余韻をききすましひと時ふかくわれは眠りき
   長谷川銀作『低い窓』

     *

二度寝のうたである。すがすがしい二度寝だ。眼ざましの音の「余韻」を「ききすまし」って。聞き済ます、だと「終りまで聞いてしまう」、聞き澄ます、だと「心を静かにして聞く」の意になる。いずれにしても、慌てて眼ざましを止めるとか、無限スヌーズ仕掛けるとか、あと5分あと1分と自らに懇願するとか、そういう姿勢とはかけ離れている。そして「ひと時ふかくわれは眠りき」なのだ。一点集中の、いちばんの眠りがここにある。

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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