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やまなみ(2020年7月号)十首選

明かり消し眠り待つ間に書きとむる未だ手探りのあはれわが歌
   大我幸藏

歌声のよみがへるこそ哀しけれふたたびは聴けずふたたびは会へず
   長島洋子

さよならを言葉に出さず言いしことかなしみはすぐ鼻腔より来る
   桜又栄一

住み捨てし家の名入りの鬼瓦に睨まれてをり寒き雨降る
   久田恒子

まなうらに母の日傘が動き出すみどりの中の古きあの径
   青木佳代子

麦畑折りたたまれて焼かれたりはつ夏は次のひかりに変わる
   氏家長子

この春も川辺に華やぐ桐のはな亡きひとの歌で知りし花の名
   山本博幸

トヨタの、ビールの、タバコの、太陽の、今から永久にコロナはウイルス
   相良信夫

ひとり分空けて座りし城址の石のベンチに梅ほころびぬ
   古賀信之

見に来てはいけませんよと伐られたる見頃むかえる黒木の藤が
   加藤かつこ


(順不同)
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「○○のうた」の記録

やまなみ誌上に書いていた「○○のうた」の記録です。(了)

     *

? 階数のうた

2020年
07月 お金のうた
06月 休載
05月 休載
04月 東直子のうた
03月 句跨りのうた
02月 小田鮎子のうた
01月 〈五句〉のうた

2019年
12月 郡司和斗のうた
11月 愛のうた
10月 島田幸典のうた
09月 休載
08月 小島なおのうた
07月 複合動詞のうた
06月 小島ゆかりのうた
05月 四句切れのうた
04月 花山周子のうた
03月 母のうた
02月 菊竹胡乃美のうた
01月 固有名詞のうた

2018年
12月 小池光のうた

やまなみ(2020年6月号)十首選

メロンパンたまたま食べて焼きたてのうまさにうたれ以後メロンパン
   野田光介

晩年はすでに過ぎしと思ふ日のわれのみの日の今日も暮れたり
   増輪薫子

八十となりたる吾の老残を夫といへども見せたくはなし
   西尾朋江

骨つぼに納まる母はうす紅の桜貝のごとくいとしくなりて
   馬場喜代子

ちちははの無きうつし世に咲く桜紅さすほどの明るさが欲し
   青木佳代子

休校となりて二人居る隣家の昼餉に芋の天ぷら揚げる
   原千恵子

ウィルスに閉ざさるる日々ふるはかのさくらはすでに葉ざくらとなる
   山下整子

マスクして花見上げればうらがなし病床日誌のやうな歌増ゆ
   近藤和正

ブロッコリー畑のうすい黄の花が泡立つように消えてゆきたり
   氏家長子

一合の雑穀混じりの米を研ぎ今日の終りと明日をつなぐ
   江川幸生


(順不同)

やまなみ(2020年5月号)十首選

歯の治療今日で終りと言われたりこんな嬉しいことがまだある
   野田光介

寒の雨ひそやかにして庭石を掃きたるほどに今朝濡れのこる
   古賀弓子

病院にあれど朔日はお赤飯百グラムゆつくり心して噛む
   井手政子

目標はと聞かれうっかり答えたり杖なし歩行五百メートル
   藏本ミチ子

老いてゆく事もこの頃あきらめぬまた誕生日良いではないか
   久田恒子

あと十年あなたと話がしたかった嬉しいときも困ったときも
   井口登志子

奥まった眼(まなこ)をさらにくぼませて別れにきたる平さんかな
   相良信夫

手をさすり手を握りしめ友と見るホスピスに咲く雪柳の白
   加藤三知乎

「太陽がいつぱい」の女優マリー・ラフォレ八十歳にて死す 吾も老いたり
   近藤久美子

新生姜は気持まっすぐせめてくる失いしもの無きがごとく
   前川美智子


(順不同)

久田恒子のうた

「やまなみ」誌から近作21首を選んで紹介します。
(まずはうたのみ。余裕ができたら何か書いていきます。)

     *

百歳まで生きてと孫の便りあり嬉しいけれどそれは無理です  ’15/2

卒寿とはかういふことか足腰の痛みに加へ癌まで始動す  ’15/12

撮りくれしデジタルカメラを覗きこむ私こんなにお婆さんなの  ’16/3

誕生日にまた改めて書きなほすしがない遺書の薄き墨いろ  ’16/6

離れゆくもの多きこの世に律義にも従かず離れずひとつわが影  ’16/8

相槌を打つ人そばになきことの寂しさ埋めてくちなし匂ふ  ’16/12

しみじみと露のわが身を思ひをり仰ぐこよひの星の無限に  ’17/3

風強しまさかまさかの九十歳おめでたいのかめでたくないのか  ’17/5

山の端の落暉うつくし子供らの縄の電車も終電となる  ’17/6

かゆき所に手が届くとはこの事か美容師に頭洗はれてをり  ’17/8

わたくしも連れて逃げてよ非常口へみちびくマークの緑のをとこ  ’17/11

双六の上がり間近の齢にて足踏みしたいがさうもゆくまい  ’18/1

超軽い庭鋏買つたと嬉し気な夫の顔顕つ使はず逝きぬ  ’18/2

こはれゆく友を見舞ひてわたくしが私であるうちに逝きたし  ’18/6

あれも輪廻これも輪廻と夜の庭のいのち短きものの声聞く  ’18/8

「大丈夫?」かつては母に言ひしこと今はむすめが幾度もわれに  ’18/9

目眩してこのまま覚めぬを願ひつつ寝ねしベッドに朝の日の射す  ’18/11

三万日とうに過ぎたるわがよはひ秋思の窓にほほ杖をつく  ’19/1

くさむらに聞きし仔猫の鳴き声が床につきてもわれを呼ぶなり  ’19/2

救急車に伝へることを書きておくひとり暮しの夜のもがり笛  ’19/4

「ありがたう」掌にでも書いておかうかな今際に声の出ぬ日の為に  ’19/5

     *

うたの後ろの'XY/Zは「やまなみ」20XY年Z月号からの引用を示しています。

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎『温泉』ご購入はこちらから。現代短歌社のオンラインショップです。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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