凡フライ日記

山下翔と短歌

NHK短歌(2014.3)

傘は差さずに街を歩いた

悔しさがやさしさになるばつかりで傘は差さずに街を歩いた

群羊をたばねるほどの力なく数をかぞへるための小石を

冬の夜の猫の小走り。大股に、変はる。光の束に刺されて

冷めきつた焙じ茶ぐいと飲み干せば押し流されてゆく白身フライ

燃えるごみ燃えないごみに仕分けしておまへがくれた鞄を捨てる

互いに脚を重ねて眠る。夜だつた。汗が冷えて、窓がきれいだ。

街灯のまぶたの重み支えつつ光は立てり夢のさめぎは

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福岡歌会(仮)アンソロジー

CAMPARIの背中


うす青い空に飛行機雲が生る散ったばかりの桜の色で

湖をなでゆく風の柔らかさホルン遠くに吹かれていたり

くちびるの渇き気にする仕草にてお前は笑う赤子のように

人参と高菜を換える 漬物はだめだと言ったお前のために

屈むとき丘になりたる筋肉が背骨の脇にひかる夕暮れ

CAMPARIの背中をなでてもう二度と会うことのないお前を思う

寝袋に沈みゆく我が肉体は四月の夜の底まで届く

新しくはじまる日々のために食む二層仕立てのチーズケーキを

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現代短歌新聞(2013.4)

水飲み場

大音量の音楽のなかとびこんで「あいていますか」「開いていますか」

大人用のバケツだろうか白猫は前足を掛け水を飲みおり

猫をなで固き背骨に触れるときみたびゆっくりなでてあげたり

お前にはお前の水飲み場があるぞ吾のグラスに手を出すでない

白猫はテーブルクロスを絨毯にだまって足を揃えて眠る

サキサキとキャベツを刻む音のせりもうすぐできるだろうカツサンド

吾のレより一オクターブ高く鳴く猫の背中はラクダのごとし

カウンター席に紅茶を飲む吾を足元にいてじっと待つ猫

細くとも強き毛糸でつながれているかのようなトーストを食む

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